コトリンゴ 「ツバメ・ノヴェレッテ」 全曲解説

アルバムについて
コトリンゴです。1月16日に4枚目の新しいアルバム「ツバメ・ノヴェレッテ」が発売になりました。このアルバムは白いツバメを主人公にして、そのツバメの探し物の赤い襟巻きと黒いジャケットを探すところを追っているようなアルバムにしたくて、大まかにストーリーを考えて作ってきました。それぞれのストーリーや風景は、もちろん私の中にはあるんですが、みなさんの頭の中で物語や風景が広がっていってくれるといいなと思っています。その頭の中の世界のサウンドトラックになれたらいいなぁと思っています。是非聴いてみてください!

01 Preamble (プレアンブル)
1曲目の「Preamble」は、サウンドトラックというか、映画のオープニングの音楽のようなものにしたくて作ってみました。モノクロの街の風景が広がっていて、そこからイントロダクションのように、わぁーっとカラーに変るような効果を音で出来ないかなと思って、色々とやってみました。ちょっとダークな感じのする曲です。

02 Let me awake (レット・ミー・アウェイク)
2曲目の「Let me awake」は、最近気になっている木管楽器のオーボエとクラリネット使ってみたいなぁと思って作った曲です。歌詞の内容は、すごく苦労をしたのですが、自分が最近よく思っていたことで、作るのはすごく時間が掛かって大変なんですけれど、壊すのはすごく簡単で。物でもそうですし、人と人との関係や信頼関係もそうですし、何にでも当てはまるなぁと思い、気を付けなければいけないなぁと考えて、その内容を歌詞にしています。

03 minoru (ミノル)
3曲目は「minoru」という曲で、アルバムには初めて収録するんですが、ライブではバンドでよく演奏していた曲です。ベースに村田シゲさん、ドラムに神谷洵平さんをお迎えして、ここからこのアルバムのバンド・セクションが始まります。そのような感じのオープニング曲にもしたくて、3曲目に収録しています。

04 ツバメが飛ぶうた
4曲目の「ツバメが飛ぶうた」も「minoru」と同じく、バンド・メンバーで録音した曲です。この曲は、ツバメが気持ちよくシャーっと飛んでいるような風景が自分の頭の中にあって、そしてこんな街なんだなぁとずっと上から見て、洋食屋さんがあったり、沢山の人が歩いているところを見ながら旋回しているような曲にしたくて作りました。その街は外に洗濯物が沢山干してあって、最終的に勢いづいたツバメがふぁっと洗濯物に突っ込んでしまい、着地をして気づいたら襟元に探し物だった赤い襟巻きが巻き付いていたみたいな、、、強引なストーリーを考えて録音する時は演奏していたんです。
歌詞は、ツバメが気持ちよく飛んでいる時に、鼻歌のようなハミングで歌っているような、言葉にならない言葉のようにしたかったんです。それで、最初は英語にしていたんですが、少し言葉から離れたい気持ちが自分にはあって、その英語の歌詞を一回カタカナに書き直して、ほとんど発音もなくして歌うのはどうかなぁと思って。そしてカタカナにしたものをもう一度ローマ字にして、最終的にはツバメがスピードに乗って「ふんふん」と歌っているような、何語か分からないようにしています。

05 かいじゅう
5曲目の「かいじゅう」は、ピアノと歌だけのシンプルな曲です。なぜ「かいじゅう」なのかというと、元々の歌詞の中に「かいじゅうのような目」というキーワードが入っていて、そこから仮タイトルを「かいじゅう」にしていたんです。でも最終的に色々と歌詞を変えていったら、「かいじゅう」という言葉がなくなってしまって。でも「かいじゅう」というタイトルと曲の雰囲気とのアンバランスさが好きで採用しています。

06 Interlude ~Rainy day~ (インタールード ~レイニー・デイ~)
6曲目の「Interlude ~Rainy day~」ですが、この曲は元々2つの曲のアイディアがあって、1つはRainy Days Bookstore & CafeというSWITCHの編集部の地下にあるお店で、雨をテーマに鈴木康広さんとのトーク・イベントがあった時に作ったものです。その時はちょうどニューヨークに行った後だったので、ニューヨークで雨の日に録った音をちょっと編集して、それについてトークをしたんです。もう1つは、インストゥルメンタルの曲で気に入っていてものがありまして、本当は街の雑踏の音とその曲を合わせていたんですけれど、雑踏の変わりに雨の音を入れたら、また雰囲気が変って、このインタルードの前の曲の「かいじゅう」で電車に乗って出かけた後に、一日雨の日を挟んで次の曲に繋がるような感じにしたかったのです。

07 テーラー兄弟
7曲目の「テーラー兄弟」ですが、ゲスト・ヴォーカルにビューティフル・ハミングバードの小池光子ちゃんをお呼びして録音しています。光ちゃんが、元々NHKの東京児童合唱団に所属していたというお話を聞いていたので、ミュージカル風に歌いながら洋服を作っていくテーラーのご主人のイメージにとても合い、自由自在に歌ってもらえるといいなぁと思いながら書いた曲です。

08 Madame Swallow (マダム・スワロー)
8曲目の「Madame Swallow」は、このアルバムの大きなテーマを決める前に既に作っていた曲なんですが、そのころからツバメがかわいいなと思っていたんです。主人公の白いツバメは男の子で、女の子ツバメを好きになってしまい、そして家族まで作ってしまうという内容の曲になっています。

09 Butterfly (バタフライ)
9曲目の「Butterfly」は、2年前に私がたまたまベランダのパセリにくっついていたアゲハチョウの幼虫を、一匹だけ虫かごに入れて羽化させたことがありました。「imomi」ちゃんという名前を付けて、オスかメスかは分からなかったのですが、たった2週間足らずの間でさなぎになってしまったんです。どんどん食べるので、毎日毎日大きくなって、あっという間にさなぎになって、ある夜にいきなりバリっと出て来たと思ったら、夜明けとともに飛んで行ってしまいました。割とあっけなかったんですけれど、その短い間に初めてそんな風にして蝶を身近に見ていたので、不思議でしょうがなくて。さなぎになっている間も指で触れてしまったら、ものすごく動くんですけれど、そういうことも知らなくて、さなぎの中でどんなことが起こっているんだろうとすごく考えました。そして、多分imomiは蝶になって飛んで行って、きっとそこで好きな人を見つけて、また次の卵を産んで、たぶんそれで一生を終えるんだろうなぁと思ったら、なんて人生なんだろうなと考えて、そのようなことを歌っています。

10 冬を待つうた
10曲目の「冬を待つうた」。この歌はツバメの少し悲しい予感を感じさせるような曲で、ツバメがどうなってしまうかは、みなさんのご想像にお任せしたいと思っています。曲の雰囲気としては、わりとゆったりとしたワルツにしたくて、言葉もそれほど多くないんですけれど、作ってみると9分になってしまいまして。割とそこを言われることが多いんですが、気にせず是非聞いてみてください。

11 maiden voyage (メイデン・ヴォヤージ)
11曲目の「maiden voyage」は、旅立ちの歌になっています。テクノロジーが発達した世の中なんですけれで、中々人の心が見えにくくなっていて、何か大事な物を探しに僕は旅に出ますという内容になっています。

12 Epilogue ~Where'd the tsubame go?~ (エピローグ ~ホェアド・ザ・ツバメ・ゴー?~)
12曲は「Epilogue ~Where'd the tsubame go?~」は、前作のミニアルバム「La mémoire de mon bandwagon」の最後に収録していた「Prologue」という曲の短調になった、少し悲しい響きの別バージョンになっています。実は、このアルバムは前作のミニアルバムから繋がっていることに私の中ではなっていまして、バンドワゴンも登場することになっています。ツバメがやって来た街に、同じようにバンドワゴンも夜な夜な出現しているという設定にしています。なので、ちょっと怪しげな雰囲気になっています。

13 Lost shoes(ロスト・シューズ)
「Lost shoes」はアルバムの一番最後のインストの曲で、すごく自分でも気に入っている曲なんです。なんとなくこの曲をすごく古い録音のような感じにしたくて、プラグインでもコンピューター上で色々と加工はできるんですが、今回1枚だけこの曲のためにアナログ盤を作りまして、実際にスタジオでレコードプレーヤーから録音しました。レコードにたくさんノイズをのせたくて、ほこりをつけたり、そして回転しているレコードを指で押さえたりしてスピードをちょっと揺らしたりしています。

ジャケットについて
今回のこの「ツバメ・ノヴェレッテ」のアルバム・ジャケット、そしてブックレットのアートワークは、以前ホームページを作っていただいたアーティストのmimoeちゃんに作っていただきました。切り絵でツバメの世界観を一緒に考えて、ジャケットは本当にすばらしくて、かわいい仕上がりになっています。ブックレットの中身は、みなさんの想像力に委ねたい部分もあったので、あまり描き過ぎずにいこうということになって、シンプルなんですけれど要所要所の場面を描いてもらいました。そして、そのmimoeちゃんが作ってくれた切り絵を、レイアウトしてくださったのはデザイナーの宮川さんです。是非、実際にCDのブックレットを手に取って見ていただきたいなと思っています。